陸遜の龍退治

蒲圻州の雋水という河がある。

この河が雨で増水すると、決まって黄龍が
八匹の息子たちをつれて水遊びにやってくるのだった。

その度に、河の流れは堰き止められ、洪水が起こった。

その洪水は近隣の田畑や民家を水浸しにし、人々を苦しめていたのだった。
 
 
ちょうど、蒲圻州に赴任してきた陸遜はこの話を聞き、人々のためになんとかしてやろうと決心した。

まず、陸遜は鉄の船をつくり、
兵のなかから屈強な男たちを50名選抜し、訓練を始めた。

黄龍がやってくるのは決まって雨の多い夏であったから、その冬から翌年春にかけて兵を訓練した。

そうして、夏になり、河が増水すると黄龍がやってきた。

陸遜は船を用意し、その様子をしばらく見ていたが、龍たちはあたり構わず波を起こし始めた。

「行くぞ!船を出せ!」
陸遜の号令とともに、兵たちを乗せた船は龍たちを追いかけた。
 
 
龍たちは陸遜たちを見てもひるむどころか、
かえって攻撃を仕掛けようとしてきた。


陸遜はこの龍退治のために用意してきた宝刀、雪花剣を抜いた。
  雪花剣は三尺もある巨大な剣であった。


向かってくる子龍に雪花剣を一閃させると、血が飛び散り、子龍の胴体が分断された。

 50名の兵士たちも龍たちを相手に刀や矛を持って、
  勇敢に闘い、7匹を退治することに成功した。

   親である黄龍はこれに怒り、水面上に出て、
    陸遜に闘いを挑んできた。


      水面が盛り上がり、大波が押し寄せた。
      その圧倒的な水の壁に対しても、
      陸遜や兵たちは少しもひるむことはなく、
      陸遜は雪花剣で、兵たちも刀や矛で益々
      勇ましく戦った。

      「立ち去れ!
         ここはおまえの住む場所ではない!」

       陸遜はそう叫んだが、
       黄龍は聞く耳を持たず、攻撃をし続けた。

                  「ちっ」

      陸遜は雪花剣を手に、黄龍の背に飛び乗り、
      その首によじ登った。
   
    そしてその額に剣を突き立てた。
  黄龍は激しく咆哮した。
船に戻った陸遜は、痛みに悶えながら逃げ去っていく黄龍を見送った。

「皆、よくやった。これで洪水はもう起こらないだろう。さあ、龍の死骸を片付けて河の流れを正すのだ」
これ以降、黄龍は二度と来なくなり、河が洪水を起こすことはなくなった。
土地の人々は陸遜に感謝し、雋水を陸水、と改めた。


(終)